1. P. Artières, Clinique de l’écriture : une histoire du regard médical sur l’écriture, (Institut Synthélabo, coll. Les empêcheurs de penser en rond,Le Plessis-Robinson, 1998).
  2. G. Besançon, Qu’est-ce que la psychologie médicale ?, (Institut Synthélabo, coll. Les empêcheurs de penser en rond,Le Plessis-Robinson, 1999).
  3. S. Chauveau, L’invention pharmaceutique, (Institut d’édition Sanofi-Synthélabo, coll. Les empêcheurs de penser en rond,Paris, 1999).
  4. S. Follin, Vivre en délirant, (Institut Synthélabo, coll. Les empêcheurs de penser en rond,Le Plessis-Robinson, 1998).
  5. I. Hacking, L’âme réécrite : étude sur la personnalité multiple et les sciences de la mémoire, (Institut Synthélabo, coll. Les empêcheurs de penser en rond,Le Plessis-Robinson, 1998).

同じ出版社から五冊。ここは確かSeuilと関係があったと思う。今はコレクション名であるLes empêcheurs de penser en rondという名前の出版社になっていたと思う。あのTardeの著作集はここから出ている。この出版社はどういうわけだか医学だかメタ医学だかのテクストばっかりだしている。何となく「文系でもわかる医学関係の本」を出す出版社だというイメージがある。こういうのを現場の医学関係者とか読んでいるんだろうか。そもそもどういうターゲットを想定しているのだろうか。日本の出版社でこういうのを得意としているのってあるのだろうか。まあいずれ読むだろうが当面は必要なさそう。あえて言うなら一番上の本、日本語に訳すと『エクリチュール臨床医学』とかいうのだろうか。副題にはエクリチュールについての医学的まなざしの歴史とある。フランスには病跡学というものはあるのだろうか。ちなみにフランスのwikipediaにはない。amazonでもpathographieで調べてみたがなかった気がする。ちらっと見たが扱っているテクストがなんか自分のやっていることに関係してそうなのでいずれ読むでしょう。あとは最後のHackingでしょうか。id:contractioさんのところをみると日本語訳はひどいらしいのでまあ仏訳でいいでしょう。しかしA4版で450ページですか。心折れてしまう。そんなわけで最後の参考文献をぱらぱらと見るのだが、結構面白い。まあ英独のことはわからないが、フランスのことに限って言うと、参考文献がBinetとかRibotとかと比べて圧倒的にAzamのものが多い。Janetファミリーより多い。人格のことについて調べようとしたとき、何となくAzamのHypnotisme, double conscience et altérations de la personnalitéから読み始めたのだが、間違いではなかったみたいだ。序文でCharcotが言っているのだが、彼は実験心理学の枠内でフランスではじめて今でいうところの人格障害を扱った人らしい。のちにBinetがさらっとまとめるが、人格の統一性は言語や性格、そして何よりも記憶の連結にある。ある記憶が特定の人格を表しているのではなく、複数の記憶の結びつけ方がそれを表しているということらしい。おそらくそれをフランスではじめてはっきりと言ったのがFélida Xを観察したAzamだったということなんだろう。まだ全然読んでないからわからないが、Hackingもその辺りの古くさい学説史をこの本の中で重視しているのだろうか。もしFélidaの話とか頻繁に出てきたらわかりやすくていいな。

そしてつぎ:

  1. L.-F. Céline, L’école des cadavres, (Denoël, Paris, 1938).
  2. P. Janet, L’évolution de la mémoire et de la notion du temps, (Chahine, Paris, 1928).
  3. F. Paulhan, Joseph de Maistre et sa philosophie, (Félix Alcan, coll. Bibliothèque de philosophie contemporaine,Paris, 1893).
  4. F. Paulhan, Les caractères, (Félix Alcan, coll. Bibliothèque de philosophie contemporaine,Paris, 1894).
  5. F. Paulhan, Physiologie de l’esprit,3e éd., (Félix Alcan, coll. Bibliothèque utile,Paris, 1895).
  6. F. Paulhan, La logique de la contradiction, (Félix Alcan, coll. Bibliothèque de philosophie contemporaine,Paris, 1911).
  7. F. Paulhan, Les transformations sociales des sentiments, (Flammarion, coll. Bibliothèque de Philosophie scientifique,Paris, 1920).
  8. F. Paulhan, Les puissances de l’abstraction, (Gallimard, coll. Idées,Paris, 1928).
  9. F. Paulhan, La morale de l’ironie,4e éd., (Félix Alcan, coll. Bibliothèque de philosophie contemporaine,Paris, 1933).
  10. F. Paulhan, Réflexions, (Bête noire, 1939).

ちょっと今回はびっくりするようなものがいくつか手に入ってうれしい。一番上はまあ言うまでもないと思う。はっきり言って自分の研究といまのところ全く関係ないのだが、なぜ買ったかというととんでもなく安かったからだ。Célineのパンフレット類はネット書店とか調べると結構あるのだが、みな高い。ところが今回はだいたい相場の半額で売りに出されていた。これは買うしかないでしょう。ちょっと本気でCélineを研究している人に申し訳ないかなとか思ったが、でも本を買うということは本を読むということではなく、本を読む可能性を買うということだから、やっぱり買っておいて正解だったでしょうとか思った。ところで驚いたのは本の状態の良さだ。1938年出版と書いているけどすごく新しく感じる。増刷したものならその年を書いておくはずだと思うが、それもないので1938年に刷ったものなのだろうか。あるいは最近買う本がFélix Alcanのものばかりで、この出版社の本は本当にみんなヤバくて、最近では背表紙がなくてもあまり驚かなくなってきた。まあもちろん出版社というよりもそれを保存している人がちゃんと管理していないということなのだろうが、やはりほんの作りそのものもちゃんとしてないのだろう。
次のもかなりレアだと思う。Pierre Janetって人は、本人は有名なのになぜか著作はあまり出回っていない。この本もネット上ではじめて見つけた。即買い。BachelardのLa dialectique de la duréeで引用されていたのをみてずっと欲しいと思っていた。実はこの本に関してはちょっとやな話があって、日本にいたときに田村にこれを探してくれと頼んだことがある。しばらく経ってメールで届いたと連絡があって、値段を聞いたらなんと6万円。そんなの買えませんといって丁重にお断りしたのだが後日定期的に来るカタログを見てみたら全く同じものを3万円で売っていた。貧しい学生に倍の値段をふっかけたんですかっ? もしかしたら業界的にはこういうことは普通なのかもしれないが、でもやはりあんまりいい気はしない。というわけで二階の店主は堀内元監督に似ていて結構いい人っぽいけどそれ以来あそこで本は買ってない。
残りはFrédéric Paulhanなのだが、結構集まった。いまのところ明らかになっている彼の単著で、もってないのはLe nouveau mysticismeの一冊だけだ。これだけがなぜか猛烈に高い(上のCélineの本より高い)ので迷っている。それはともかく、みんないい値段のくせに状態がヤバい。特にひどいのがLa logique de la contradictionだ。背表紙がないくせに5000円ぐらいした。しかしなんとこの本は本人のサイン入りの献呈本だった。最初何が書いてあるかわからなかったが隣りのフランス人に聞いてみたらどうやらそうらしい。ちょっといい気になってたらそのフランス人に「息子のJeanのサインだったらもっと価値があったかもね」とかいわれた。えーでも息子のサインなんて結構たくさんありそうじゃんとか思ったがでも世間的にはそうかもしれない。自慢する相手がいないのでここで自慢しておく。