David LYNCH, Inland empire, 2006


 5年ぐらい前か、前の作品のMullholland driveをフランスで見て、一般公開前の特別上映ということもあってかいつもガラガラの映画館が満席で、終わったらいわゆるスタンディング・オベーションというやつがわき起こって、フランスではLynch人気あるんだなあとか思っていたけど、今回見に行ったらひどい入りだった。Woody AllenScoopを見たのと同じ映画館だったが、こちらが立ち見が出るぐらいの入りだったのに対し、Inland empireでは2割弱の入りだっただろうか、しかも上映中続々と人が帰ってゆく。

 しかし帰りたくなる気持ちもわからなくはない。元も子もないことを言えば、訳が分からん。前作ではわからないことはわからなかったが、何となく自分なりに納得できるところがあったように記憶しているが、今回は納得というどころかとっかかり自体がなかった。見終わったあといっしょに見に行った人と話し合った結果、最後の方で抱き合った二人は実は同一人物ではないかということで一応納得した。まあ細かいところでつじつまが合わないところがあるだろうが、見た本人がすっきりするかどうかということは重要だと思う。

 あと、前作も確かそうだったと思うが、なんか結構怖い演出が多かった。全編やな感じのBGMというか通奏低音というかが流れていて、もうそれだけで怖い。『男はつらいよ』とかもあの通奏低音があるだけで怖くなるんじゃないだろうか。この監督はところどころで人を食ったというか冗談のような演出をしたりするが(あんまり記憶がないがMullholland driveで小人みたいな人たちが踊りだしたりとか)今回はそれすらも怖かった。

 とにかく理解するにはもう一度見ないとダメなような気がする。